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あらすじ

 「念」や「気」を使い、相手の心身にダメージを与える闇の商売、拝み屋。
 二神暮人はどんな依頼も引き受ける拝み屋。原田麻里はある人物を呪い殺して欲しいと依頼する。 

 原田家の先祖の原田左之助が、坂本龍馬を暗殺した犯人だとされているため、彼女の一家は坂本龍馬の熱狂的な信者から嫌がらせを受けていた。
 そのため、嫌がらせをしている張本人を呪いたいという。

 二神暮人は、呪う前に坂本龍馬の霊と交信し、犯人が原田左之助なのか確かめる。
 すると、やはり原田が犯人であることが分かる。それなら、恨まれても仕方がないと交霊の高額な依頼料を受け取って依頼人を帰す。
 しかし、暮人には霊と交信する力などなく、依頼人を騙しているだけだった。

 暮人の息子である純は父のやり方が気に入らなくて反発する。
 そして、本物の霊能力がある彼は、坂本龍馬を暗殺した真犯人を見つけるために、霊体となって暗殺日の当日に飛ぶ。

 純は町人に乗り移り、暗殺の犯人を捜査する。そして、犯人が幕府の警備隊「京都見廻組」だと分かるが、それを証明する証拠をつかめないまま霊力が限界に達して現代に戻る。
 犯人が分かったのに依頼人を救うことができないと悔しがっていると、坂本竜馬暗殺に、彦根藩が関与していたことを示す密書が京都市内で見つかったというニュースが流れる。

 その文書により彦根藩が京都見廻組に龍馬暗殺を命じたことが証明され、原田左之助の無実も明らかになる。
 実はその文書は暮人が念で発見したものだということを後で知った純は少しだけ父親を見直す。


・登場人物紹介

二神純(十八歳)
 いいかげんに拝み屋の仕事をしている父をフォローしている。
 霊子となり過去に行くことができる。過去では他人を乗っ取ることができる。
 ただし、いられる時間は3時間。
 不良っぽいが、真実を突き止める情熱はすごい。過去に行って母を殺した犯人を、見つけるのが夢。なぜかその時間にだけは、移動できない。
 「真実を探してきます」

二神暮人(四十歳)
 拝み屋、適当なことを言って、金をもらっている。
 霊能力などかけらもないふりをしている。妻が死ぬまでは有能な能力者だった。しかし、ある理由から能力を隠し、何も出来ないように振舞っている。

原田麻里(二十歳)
 忠の孫娘。勇が死ぬまでに真犯人が知りたくて、高名な二神暮人に交霊術で坂本竜馬を下ろしてもらい真犯人を聞こうとする。しかし、二神がやっぱり原田だと言ったため、がっかりして帰る。
 もう誰も相手にしなくなったおじいちゃんのために犯人探しをする。

原田忠(八十歳)
 新撰組原田の子孫。死の直前だが、坂本竜馬を暗殺した犯人だと言われていることが唯一の心残り。真犯人を見つけたいと思っている。
 原田は犯人じゃないと主張するも誰も相手にしてくれない。証拠がなかったから。

魂の拝み屋

◎拝み屋、二神の部屋
  四畳半の和室。お香が焚かれている。
  二神暮人と依頼人の原田麻里が正座をし、会話をしている。
麻里「おねがいします」
暮人「本当にいいんですか? わたしの仕事は拝み屋、相手を呪って不幸を呼び込む。下
手をすると、その相手を殺すことになるかもしれませんよ」
  黙る麻里。
暮人「過去にいたんですよ。呪った相手が不幸にも死に、その罪の意識に耐え切れず自殺
してしまった人がね」
麻里「わたしは大丈夫です。今の苦しみに比べたら罪の意識なんてたいしたことはありませんから」
暮人「それほどひどいんですか? その坂本龍馬の熱狂的信者とやらの嫌がらせは」
麻里「飼っていた猫が殺されてばら撒かれたり、玄関に置いてあった新聞紙に火がつけられたり、『お前らが坂本龍馬を殺したんだ』と玄関の窓にペンキで書かれたり……、言い出したらきりがありません。父は心労で疲れ果て、居眠り運転で車ごと川に飛び込み亡くなりました……」
暮人「……」
  暮人の息子である純が父の一歩後ろに座り二人の会話を聞いている。高校が休みの日曜日には父の仕事を手伝っている。
麻里「わたしも家族も、もう限界なんです」
暮人「わかりました。話をまとめると、あなたの祖先である新撰組の原田左之助が近江屋事件で坂本龍馬を暗殺した犯人であることを逆恨みして、あなたがたに嫌がらせを続けている人物がいる。だから、その人物の足を呪って、動けなくして欲しいということですね」
麻里「はい」
  ふーっと大きくため息をつく暮人。
暮人「その依頼は引き受けられません」
麻里「どうしてなんですか?」
暮人「原田左之助が暗殺犯なのだから、その子孫のあなた方が恨まれるのは当然のことでしょう。少々嫌がらせをされたからって、呪ってやろうだなんて自分勝手すぎますよ。相談料として、これだけ置いて帰ってください」
  暮人は、金額の書かれた紙を麻里の前に置く。
麻里「じゃ、じゃあ、原田左之助が犯人じゃなかったらどうなんですか? 実は坂本龍馬殺しの真犯人が他にいるとしたら、わたしたちが嫌がらせを受ける理由なんてない」
暮人「あなたも聞き分けのない人だ。それなら、いまここで坂本龍馬の霊を呼び出しますから尋ねてみたらいい。『誰があなたを殺したんですか?』ってね。もちろん、特別料金をいただきますが」
  恐る恐るうなづく麻里。
暮人「純、あれを」
  純は嫌そうな顔をして、霊呼びの小槌を渡す。叩きつけるように渡したため、暮人は痛そうな顔をする。
暮人「では、参霊の儀式を始めます」
  暮人は紙に「坂本龍馬」と書き、小槌の中に入れる。
暮人「来い、来い、来い」
  狂ったように叫ぶ暮人。
  しばらく続けて、声を止める。
暮人「へやー」
  暮人は両手で握った小槌で自分の頭を思い切り殴る。
  気を失ってその場で崩れ落ちる暮人。
  驚いて暮人を見つめる麻里。純はしらけた顔。
  しばらくすると、暮人がむっくりと起き上がる。
暮人「オレを呼んだのは誰ぜよ」
  むすっとしながら、あぐらをかく。
麻里「坂本龍馬さんですか?」
暮人「いそいどるきに、用事があるがやったらはよう」
麻里「あ、えーと。近江屋事件であなたを暗殺した犯人は原田左之助だと言われていますが、本当ですか?」
暮人「原田左之助で間違いないぜよ。顔もしっかり見たきに、逃げるときに慌てちょったきに、刀の鞘と下駄を忘れていきおうた」
  残念そうな顔をする麻里。
暮人「では、失礼する」
  暮人はまた、ぐったりと倒れた。
  起き上がって麻里に言う。
暮人「実際、原田左之助の鞘と下駄が忘れられていたのは確固たる事実。坂本さんもそう言った。やはり、原田が犯人で間違いないようですね」
麻里「坂本竜馬の暗殺者の子孫だと後ろ指を指されてつらい思いをしてきましたが、真実なら仕方がありません」
暮人「もし、まだ納得できないのなら、原田左之助も参霊してみましょうか?」
麻里「もう結構です」
帰ろうとする麻里に向かって、助手の二神純が言う。
純「すみません。お役に立てなくて」
麻里「気にしないでください。でも、おじいちゃんは左之助が犯人じゃないと信じているんです。だから、確かめたかったんですが、ご高名な二神様に降ろしてもらった坂本竜馬さんが左之助が犯人だと言うのなら、間違っていないのでしょう。おじいさんにはそう伝えます」
残念そうに帰る麻里。
麻里がいなくなって、純が言う。
純「ひどいじゃないか父さん。あんな嘘言って」
暮人「仕方がないだろ。交霊術なんてできないんだから、事実にもとづいて話をしただけだ。だいたい、死んだ人間の霊を呼び出すなんてできっこないぞ」
  麻里から受け取ったお金の束を数える暮人。
純「だったら、何で霊を呼び出してやるなんて言うんだよ」
暮人「そりゃあ、儲かるからだよ。今の時代、呪ってるだけじゃ金にならんよ。お前だってその金で生きていけてるんだぞ。もっと感謝しろよ」
純「ああ、感謝してるよ。昔の父さんにはね。でも、母さんが亡くなってから、父さんは変わったよ。今の父さんなんて大っ嫌いだ」
部屋を飛び出す純。

◎純の部屋
ベッドで横になる純。
純N「さっきの人、悲しい顔してたな……」
  しばらく考えてから、
純「やっぱりインチキでしたって誤りに行ったほうがいいよな」

◎麻里の家の近く
  純は家を出て、依頼を引き受けたときに書いてもらった住所を頼りに麻里の家を探している。
純「この辺りかな?」
  と呟くと、近くの家から声が聞こえてくる。
それは麻里がおじいさん(原田吾一)と話をしている声。

◎麻里の家の中
吾一「そうか、犯人は原田左之助なのか……」
吾一はがっかりしながらも「ありがとう」と麻里をいたわる。
吾一「お前の父が亡くなってから、原田左之助が真犯人ではないことを証明しようとがんばってきたが、無駄だったのかもしれないな。辛い思いをさせてごめんよ」
  その時、何本ものロケット花火が麻里の家に打ち込まれる。
  甲高い音が響く。
麻里「きゃあー」
  叫び声と共に額を押さえる麻里。額から血が流れる。
  当たったロケット花火の先には剃刀が付けられている。
吾一「麻里、大丈夫か?」
  駆け寄る吾一。

◎麻里の家の近く
  純は犯人を捜そうと周りを見渡す。
  バイクで逃げていく男を見つけて追いかけるが、すぐに見失う。
純「くそっ」
 そう叫んで、全力で走って家に帰る。
純「絶対、見つけてやる。真実の過去を」

◎麻里の家
  玄関にメモ書きが残されているのを見つける麻里。
  メモには「真犯人を必ずみつけて来ます」と書かれている。

◎二神家の納屋
家の裏の納屋の前に立つ純。
純「久しぶりにやるか」
と気合を入れる。
納屋の中で座禅を組む純。
周りの物音が聞こえなくなるまで集中する。
純「霊子離脱!」
純の魂だけがぼやーっと浮かび上がってくる。そして、古い井戸の中に入っていく。純「目標は、一八六七年十二月十日、京都近江屋」

◎近江屋の前の道
江戸時代に到着した純の魂。
近江屋の前で掃除をしている青年がいる。純の魂はその青年に入っていく。
  青年は一瞬目を見開き、驚いた表情になったが、すぐに純の目になる。
  青年に乗り移った純は、確かめるように体を動かす。
純「今回はこの人の体を借りよう。この時代にいられるのは二時間。事件が起こるのは一時間半後だ。充分時間はある」
  道の真ん中でつぶやいていると、後ろから男がぶつかってくる。
純「痛っ!」
  走り去る男の手に財布が見える。
  はっとして懐に手をやる純。
純「しまった。財布を取られた」
  追いかける純。しかし、男の足は速い。
純「だめだ。追いつけない」
  その時、見知らぬ人が男の前に立ちふさがる。
純「誰だ? あの人」
男は驚いて言う。
男「お、お前は、『京都見廻組』の桂準之助」
準之助「財布を返しな。すぐに返すなら見逃してやろう。ただし、二度目はないぞ」
  男は財布を投げて逃げていく。
準之助「大丈夫かい、兄ちゃん」
純「あなたは?」
準之助「えっ、知らないのか? 珍しいやつだな。俺は京都市中の取り締まりを主任務とする幕府の警備隊『京都見廻組』の桂準之助だ」
純「京都の取締りって、新撰組とは違うんですか?」
準之助「うーん、まあ、似たようなものだな。新撰組と同じように京都守護職に属しているし、京都の治安回復と維持を目的としているから」
  納得してうなづく純。
準之助「まあ、気をつけてな」
と言って去っていく。
純「へえ、いろんな人がいるんだなあ」
近江屋の女「吉蔵、何やってるんだ。掃除が終わったら、とっとと戻っといで」
  びくりとする純。
純「は、はい。ただいま」
  慌てて店の中に入る。

◎土佐藩邸
中岡慎太郎が、河原町土佐藩邸に福岡藤次を訪ねる。しかし、福岡は留守。
中岡「留守か、三条大橋の乱闘事件で新撰組に捕らえられた元土佐勤王党の宮川助五郎の身柄引取りの処置について相談したかったが……、さてどうしたものか」
  しばらく歩いて立ち止まる。
中岡「そうだ、竜馬に相談してみるか」
中岡は、近江屋へと足を運ぶ。

◎近江屋
竜馬は母屋の二階に中岡を通す。
竜馬は数日前から風邪をひいている。
近江屋の二階は全部で四間あり、奥の八畳の間で、火鉢をはさんで中岡と対座し(右の床を背に竜馬が座り、左側の斜め手前に中岡が着座)、話を聞く。
二つ部屋をへだてた表の間では、竜馬の下僕である藤吉が内職の楊枝をけずっている。
やがて夜が更けてきたので藤吉は部屋の行灯に灯を入れる。
そこへ岡本健三郎が坂本と中岡の話を聞こうと訪ねてくる。ほとんど同時刻に中岡の使いで薩摩藩邸へ行っていた菊屋の峰吉が帰ってくる。
しばらくの間、竜馬、中岡、岡本の三人は話し込む。
風邪気味の龍馬が突然、
坂本「軍鶏鍋が食べたいなあ」
と言い出し、峰吉に
坂本「軍鶏を買うてきてくれ」
岡本健三郎もそれを汐時に帰ろうと思い、峰吉と連れ立って近江屋を出た。

◎ 四条
岡本と峰吉は四条の辻で別れ、峰吉は四条小路の「鳥新」で軍鶏を注文し、近江屋へ    
戻る。

◎近江屋
二階表の間の藤吉は、土間から聞こえた大声に楊枝を削る手を止める。
土間に降りると土間にひとりの武士が立っている。
武士「十津川郷士の者だが、才谷先生ご在宅ならばお目にかかりたい」
武士が手札を渡す。(龍馬の変名で「才谷梅太郎」と言う)
藤吉「はい」
手札を持って二階の階段を登ったので、男は竜馬が居ると確信する。
別の三人の男が藤吉を追いかけ階段を上りかけている。
そして藤吉が階段を登りつめたところで、背中を真っ二つに斬り下げ、叫ばせまいと思い、続けて太刀を浴びせ絶命させる。
物音を聞いた純が駆け寄る。
純は階段を登った三人の中の一人の顔を見て、
純「あっ!」
と声を出す。
純が見た顔は、財布を取り返してくれた『京都見廻組』の桂準之助。
準之助「子供は引っ込んでいろ」
  そう言って純を突き飛ばした。
あまりに勢いが強く、柱に頭をぶつけ純は気を失う。
その物音を聞いた龍馬は、
坂本「ほたえな!(騒ぐな)」
龍馬が叫んだと同時に桂準之助、渡辺吉太郎、高橋安次郎という三人の男が竜馬のいる部屋に飛び込む。
瞬間、渡辺が、
渡辺「コナクソ」
と叫び、中岡慎太郎の後頭部を刀で一撃する。
龍馬は背後に置いてあった刀を取ろうとして、背をみせた瞬間背後から袈裟懸けに(左から右に)桂準之助から第一の太刀をうける。が、竜馬は倒れない。風邪で真綿のはいった厚い半纏を着ているので、衝撃が少し浅いため傷が浅い。
龍馬は刀を取ると反転して桂準之助の第二撃を刀を抜く暇なく、鞘ごと受ける。
しかし、刺客の剣は龍馬の鞘を切り裂き、龍馬の刀の刃が欠けるほどの力で斬りつける。
そして、剣は鞘を払いすべりながら、龍馬の額を真横に切り裂く。この一撃が致命傷になる。
坂本「石川(中岡の変名)、刀はないか?刀は?」
と呟いて倒れる。
中岡も佩刀を屏風の後ろに置いていたので、それを取る間もなく、脇差で応戦するが、数十箇所もの傷を受ける。
渡辺吉太郎が、中岡の臀部に二回、骨まで達するぐらい刀を突き刺したが、中岡が動かずにいると、佐々木推三郎が来て、
佐々木推三郎「もうよい、もうよい」
全員すぐに去っていく。
  この間、わずか数分。
近江屋を出ようとする桂準之助に、目を覚ましたばかりの純が問いかける。
純「どうしてですか? さっき京都の治安を守るって言っていたのにどうして暗殺なんかするんです」
準之助「子供には分からんよ」
  冷たい言い方に落胆する純。
純「あなたが捨てた鞘と下駄のせいで、新撰組の原田が犯人だとされてしまいます。せめて、犯人は自分だと名乗り出てください」
準之助「それはできん。われわれにはまだやらねばならぬことがある。新撰組はいらないが、京都見廻組は必要なのだよ」
純「お願いします……」
  時間切れになり、純の魂は体を離れ、現代に戻っていく。
  慌てる純。 
純「待って、まだ……」                                    
  純の魂が抜け、気絶したように倒れる青年を見て、立ち去る準之助。
刺客がたち去ってから、ほどなく竜馬が意識を取り戻し、気丈にも座りなおし、佩刀の鞘をはらって刀身を行灯の光で確かめながら言う。
坂本「石川、手はきくか?」
中岡「利く」
中岡が答えると、六畳間の隣室を這って廊下に進み、階段口まで行き、
坂本「新助、医者」
叫ぶが、声に力なく一階の家人まで届かない。
竜馬は欄干を掴み座りなおし、明かりに刀をかざして、額の傷を見る。
坂本「おれは脳をやられた。もう、いかん・・・」
言い終わると同時に前のめりに倒れ、息絶える。
中岡は気力を振り絞り、屋根伝いに北隣の道具師井筒寡兵衛の屋根まで這ったが、そこで力尽きる。
中岡は数十箇所を斬られ、腕は皮一枚で繋がっている状態。
 
◎二神家の納屋
現代に純の魂が帰ってくる。純の体に戻ると、目を開く。
純は立ち上がって外に飛び出す。

◎本屋
急いで本屋に入る純。坂本竜馬の本を手に取る。するとやはり、犯人は原田佐之助だとされている。
純「やっぱり、歴史は変わっていない」
  力が抜けて座り込む純。
純N「京都見廻組の人たちは自供しなかったんだ。だめだ、麻里さんたちは今まで通りに嫌がらせを受け続ける……」
純「くそっ、何でだよ」

◎二神家の純の部屋
疲れきった表情でベッドに横たわる純。
気分転換をしようとテレビをつける。
ニュース番組が映し出される。それが思いもよらないもののため、純はばっと起き上がり釘付けになる。
リポーター「慶応三年十一月十五日の坂本竜馬暗殺に、彦根藩が関与していたことを示す密書が京都市内で見つかりました」
  リポーターが興奮気味に伝えている。
リポーター「密書は、京都市東山区の霊山歴史館が、過去に寄贈された史料を調べていて見つけたということです。事件翌日の十六日付で、京都見廻組与頭、佐々木只三郎の兄で会津藩重臣の手代木直右衛門が、彦根藩金奉行の石黒伝右衛門にあてたものです」
リポーター「彦根藩は当時、十五代将軍の徳川慶喜を大政奉還後の新政府の要職に就けようと奔走しており、専門家は『徳川外しの構想を持つ竜馬が邪魔だったのでは』と、彦根藩が暗殺の謀議に加わった可能性を示唆しています。密書が見つかったことにより、京都見廻組が坂本竜馬、中岡新太郎暗殺の犯人であることは間違いなくなったと専門家は分析しています」
  霊山歴史館学芸課長の木村幸彦がインタビューに答える。
木村「ある霊能力者から電話があり、思いもよらぬものが見つかるからと言われて探したら本当に見つかりました」
純「ある霊能力者?」
 はっと気が付き、父の部屋に走る純。
純「お父さん、調べてくれたんだ」
暮人「何のことだ?」
  とぼける暮人。しかし、純は暮人が霊能力で証拠の資料が眠る場所を探し出したと確信している。
暮人「ところで、お前、またへんてこな能力使って犯人に会いに行ってきたのか?」
純「犯人は京都見廻組の七人だったよ。坂本龍馬を殺したのは、桂準之助って人だった。現場に残されていた遺留品は新撰組を落としいれようとする策略だね」
暮人「真犯人を見つけようだなんて、お前は金にもならないことをよくやるなあ」
純N「父さんもね」
  少し父親を見直して微笑む純。

◎麻里の家
 麻里がテレビのニュースに気が付く。
原田吾一を呼んで、一緒に見る。
テレビを掴み涙する吾一。
  麻里は「真犯人を必ずみつけて来ます」と書かれたメモをそっと胸で抱きしめた。

おしまい